nous letter
2008年6月18日 10:18

 「うらまぶた」という音楽ユニットのCDを聴いた。うらまぶたという妙な名前は、ときどきこのコーナーにも出てくる馬喰町ART+EATの若きスタッフのひとり武徹太郎さんがリーダーの4人編成バンド名。これは、その初ミニアルバムだ。タイトルは『最果てを行く』。

080616.jpg 彼のギターはライブでちらっと聴いたことがあるが、ボーカルがはいったものはこのCDで聴くのがはじめて。すべてオリジナルでセンスのいい曲ばかりだが、この女性ボーカルが曲にぴったり合っていてとてもいい。ちょっと元ちとせを思わせる声の丁寧な歌い方で、いっぺんに好きになってしまった。歌も演奏もきばったところがなく、かといってユルイわけでもない。朝露がのこる野の草花や野菜サラダのように清々しい聴き心地。巷にあふれかえる「間食」音楽で太りぎみの人には、身体と心に効く絶好のダイエット・ミュージックとしてお薦めです。ちなみに武くんは画家でもある。このアルバムのアートワークは彼が描いている。
 興味ある人は、うらまぶたの公式HPを見てほしい。

 「うらまぶた」という名を受けて、お遊びで作った詩を捧げよう。
  
  う 失われた音の在り処
  ら ランドセルの空耳は
  ま マンドリンの腹に姙
  ぶ 分節しえない文節の
  た 誕生の楽を捕まえる

2008年6月17日 10:02

200806151048000.jpg東京・上野で開かれている『ダーウィン展』は今月の22日(日)で閉幕します。
15日に見に行った友人が、写メールを送ってくれたので紹介します。
エディション・ヌースで編集・デザインを担当した図録の売り場で撮影したものということです。茂木さんの写真に付いた吹き出しには「いい本ですね!」とあります。
友人からは「いまだ大盛況でしたよ」というコメントがメールに書き込まれていました。

なお、上野の国立博物館のあと『ダーウィン展』は大阪に移り、7月19日(土)から大阪市立自然史博物館で開かれます。

2008年6月16日 10:42

[ウブドの光る雨0-1(つづき)]

 ★

 私にとって今回のバリは、5度目のバリである。はじめてこの島を訪れたのが20数年前で、前半の10年間に4回来たので、ほぼ10年ぶりということになる。一度は計画しつつも出発日直前におきた“あの”爆弾テロ事件のために、キャンセルを余儀なくされるということがあり、またバリに行きたいという想いを抱きながら、機会を待ちつづけた10年であった。

 5度目のバリ、そして、5人の旅人。
 私にとってのバリの旅の重要な要素は、いつも“旅の仲間”がいることである(バリにおいて「5」という数字が重要な意味を持つことは後になって知ることになる)。

 たとえばヨーロッパの都市などとちがい、なぜかバリにひとりで行きたいと思ったことはなく、じっさいにこれまでのバリの記憶はすべて、同行者たちのそのときの面影と一体化している。何度目かということもさることながら、誰といっしょにバリで過ごしたかによって、それぞれちがったバリが目の前に浮かんでくるのだ。
 喜びや快楽は共有されることでこそ喜びや快楽になるという、あたりまえのことではあるが、バリという土地はそんな要素がとくに強いのかもしれない。
 それと、もしひとりでバリに来たら二度と帰れなくなるかもしれないという恐れが、気持ちのどこかに潜んでいるのかもしれないのだが(夢の世界から日常に戻れなくなる恐れとでもいうか。悪夢というのは、帰り道を失うことの不安が大きな要因になるわけで)。

 私以外は、バリの初体験者であったこと、このこともよかった気がする。
 10年という年月の隔たりと、4人の旅の仲間たちは、私に一旅行者としてバリをもう一度“はじめて”体験するための、新鮮な“まなざし”をあたえてくれることになるはずだから。

 男2人、女2人の同行者たちは、夜の向こうに何を見ることになるのか。

2008年6月13日 11:40

[ウブドの光る雨0-1]

bali00_1.jpg 旅先へは夜に着くのが、私は好きだ。

 暗い海の上空を飛ぶ飛行機の窓から、海よりももっと暗い島影に、黄色い星々のように煌めく明かりが見えてきたかと思う間もなく地上に降下していく感覚が好きだし、飛行機を降り、見知らぬ町、見知らぬ人々の前に一気にストレンジャーとしての身をさらすのではなく、その地に人知れず静かに潜入していく感じもいい。
 なかでも格別なのは、バリだ。

 デンパサールのングラライ空港に降り立ち、空港に迎えに来ていたバリ人スタッフの運転するミニバンに乗りこんで、宿泊地ウブドへの道を走りながら、やっぱりバリには夜に着くのがいいなと思った。
 到着時間の遅れもあって、飛行機が赤道を越えるあたりで約1時間の時差を調整した腕時計を見ると、もう夜半に近い。

 ひさしぶりのバリである。タイヤから伝わる振動で、たしかにこの地に自分がいることを感じながら、旅の高揚感と、また来たいという想いがかなったことの安堵感、そして幾分かの不安が入り交じった気持ちで、私は窓から外の暗闇に目を凝らしていた。

 ヘッドライトが照らし出す道路や周りの景色は、まるで映画館のスクリーンに投影される映像のようにフロントガラスを流れていく。道は夜の川のようでもある。暗い車内。かなり、飛ばしている。助手席からバリ人スタッフが流暢な日本語で話しかけてくる。

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Profile

石井 泉/いしい いずみ
東京出身。明治学院大学文学部フランス文学科卒。長きにわたり、出版社、編集プロダクションに在籍、主に科学・芸術関係の雑誌、書籍編集およびデザイン、公共施設の展示プランニング等を手がける。2006年に独立し、「エディション・ヌース」として事務所を開設。科学・芸術・哲学の領域を、横断的な視点で編集・表現していく感性と技を模索しつづけている。最近は依頼に応じてエッセイの執筆なども行う。