2005年12月21日 19:36

○わたくし的AIRな80日間7

茶会じかけの“クローンド・ヴィーナス”キーワードは『予兆そして破壊と再生』

縄文人への挨拶『庸二の楊子』12000年プロジェクト

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 茶会には菓子をいただくための楊子がつきもの。なんでも今年春のこの雲谷の森には10何年ぶりかの大雪に見舞われたそうで、至る所に雪によって破壊された森の樹々が横たわって無惨な姿を曝していました。そこで私はその辺の小道に散在する夥しい樹々の枝の中から適当な細さのものを選んで、楊子を削り出すことで、私のささやかな森の再生を果たすこと思い付いたのです。それからというもの毎日10本、20本と、ギャラリーの一隅で楊子削りのパフォーマンスを始めました。それが『庸二の楊子』12,000年プロジェクトです。

 そして金継ぎで使い慣れた漆を、拭き漆にしてかけるのですが、これはこの青森市にある三内丸山の縄文遺跡から6,000年前の漆製品が発掘されたこと、そしてそれはかなり高度な技術で、とうてい私の拭き漆など足下にも及ばないのですが、そうしたテクノロジーを開発していた縄文人へのオマージュ、現代からのささやかな挨拶、といった気持ちのパフォーマンスなのです。

 そうしながらふと、私の楊枝ももしかすると漆の御陰でこの先6,000年も保ってしまうかもしれない。つまり過去の6,000年をこうして目の前に引き出すことによって、そのまま6,000年の未来へつながることになるかもしれない、という少し大げさですが、この『庸二の楊子』12,000年プロジェクトはそうした妄想に促されながら進められたのです。

 とはいっても今から6,000年後の人間の食生活はいったいどのようなものなのか。ピルの2-3錠も飲んで、はいディナー!などということになっているかもしれません。その時ここ雲谷の遺跡から発掘されたこの奇妙な形のものを巡って、未来の考古学者たちの喧々諤々の様が目に見えるようです。まさに白昼の妄想です。

― 行動展示という新しい在り方 ―

 作品を展示するギャラリーの一隅でのこの楊枝削りのプロジェクトを“パフォーマンス”と言いましたが、これは現代美術でいわれてきた、いわゆるパフォーマンスというものとも、また先の「割れ茶会」をパフォーマンスと呼ぶのとも、些かニュアンスを異にするものです。むしろこれはこのごろ動物園などでよく言われるようになった“行動展示”という、それに近いものがあると思っています。“動物”という個体ではなく、その“行動”という無形のものを見せようという動物園の新しい在り方です。

 それがこの美術館のもう一つの特徴でもあるのですが、滞在している作家たちの“作品”というモノを見せるばかりでなく、作家たちのふだんは内側に隠されている制作の状態、そこでの“行動”をも見てもらおう、というまさに行動展示です。

 ですからACACでは、ギャラリーだけが展示空間ではなく、創作棟の中迄も展示の対象になっていて、観客が自由に入ってくることが許されています。そこで観客は普段見ることが出来ない制作風景や、邪魔にならない程度に作家達と言葉を交わすことが出来る仕組みになっているのです。観客はより深くアートの体験を得ることが出来る筈です。

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 特に今回の私の場合には、7月2日から始まる展覧会の開催初日を待たず、このACACに入った5月の半ばから、創作棟で出来上がった作品をいちいちギャラリーに運んで展示し、それによって日々作品が増殖して行く様を見てもらおう、というプランが、はじめから濱田館長との間でありました。じつはこれは私のアトリエ自体が、展示空間を併設して作られていて、まったく同じ気分で展覧会をしてきましたので、比較的素直に入って行けたのです。そして直ちにギャラリーの一隅へ作業台を持ち込んで楊枝削りをしながら、その楊子が壁面に増えて行くことで、いっそう増殖の感じを直截に表現出来るのではないか、という発想です。

 ただ、拭き漆の作業だけは、観客がかぶれるといけないので、ここでは出来ず、創作棟でも危ないし、結局、自分の部屋のバスルームで湿度と温度を調節しながら、ここで完全に乾かせて、仕上げたものを並べました。

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Profile

はいじまようじ
はいじま・ようじ
1931年東京に生まれる。1950年始め頃より作家活動を開始。美術文化協会、新象作家協会、読売アンデパンダン展などを経て現在はフリーランスに。以後、幾つかの個展、幾つかのグループ展、コンクール、美術展などで発表。2005年国際芸術センター青森における、春のアーチストインレジデンスに参加。書籍を炭に焼くプロジェクトを「グーテンベルグ炭書」と名付けて開始、現在に至る。 nous_flash 詳細
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