『先生とわたし』◎庵頓亭読書日記

2008年5月21日 17:50
先生とわたし
 先の連休の期間中に、例の『先生とわたし』(四方田犬彦/新潮社)を読了して思うところ多々有ったので、以下ランダムに、、、

 <1>ヨモタ先生の大学時代の先生はかの著名な英文学者、故由良君美氏で、私はその名前は以前から知っていましたが著作は全く未読で(学生時代それなりに興味は有ったものの結局読まず仕舞でした)、今回この著作を通じて初めてその業績や人となりを知りました。

(勿論 ヨモタ先生の眼を通してですが、、、、)

 <2>本書が扱うのは、先の『ハイスクール1968』の続編に当たる時期で、ヨモタ先生が駒場の学生となる1972年から由良氏が亡くなる1990年までの約30年間に亘って、その輝かしい師弟関係と結局は不幸な両者の断絶に至るまでの顛末が、巧みな構成と抑制の効いた行き届いた表現/文体で綴られており、最後まで息をもつがせず読ませます。

 <3>章立ては以下のとおりで

   プロローグ
   第1章 メフィストフェレス
   第2章 ファウスト
   第3章 出自と残滓
   第4章 ヨブ
    間奏曲
   第5章 ウェルギリウス
   エピローグ

 各章に附けられたタイトルがその内容を象徴しているようですが、全体に亘って 描かれた時代背景の変転とともに英文学のみならず、言語論・表現論・文化論に関連した最先端の文学論/芸術論の思潮の動向が跡付けられており、それらの多くに少なからず関心をもって接してきた私としては、懐かしくも興味深く読みつぐことができました。
 
 (といって、正直 新たに教えられたことも非常に多かったですが、、、、)

 <4> 一方、第3章では由良氏の出自がその両親/祖父母の時代まで遡って詳細に紹介され、間奏曲では G.スタイナー、山折哲雄の著作を中心とした師弟論の展開に充てられており、本書を 時間的にも内容的にも極めて奥行きが広く深みの有るものにしています、、、、、   

 <5>私の非力では、このような多彩な内容の本書を上手く纏めることは出来ませんが、学問のみならず宗教、そして様々な技芸の分野で普遍的に存在する師弟関係(先達/後進の関係)を介しての知識/技能/精神の伝達・伝承は、その当事者の個性や時代の趨勢の中で極めて複雑かつ興味深いものだと深く感じ入りました。

(師弟関係での伝承は、「顕教/密教」というタームでも検討されています、、)
  
(本書は、強いてジャンルを冠せば「私評伝」「私回想」とでも言うんですかね?)

 <6>どちらにしても、本書は この連休中に読んだ数冊なかのBest として、皆様に”一押し”する次第です、、、

 <7>あと、『思想地図 vol.1 (1) (NHKブックス 別巻)』(東浩紀他編/NHK出版)では、30歳台論者達のなかなか興味深い議論が展開されていましたが、これはまた別の機会にでも、、、

庵頓亭 主人

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