松島沖のウミネコ
nous letter
2005年10月 6日 10:44

引用の星座 1 『レヴィ=ストロース講議』

 ……文化とは、ある文明に属する人びとが世界ととり結ぶさまざまな関係全体のことであり、社会とは、それらの人びとがお互いのあいだにとり結ぶさまざまな関係のことです。

中略

 ……理想的なのは第三の道、すなわち、文化面ではこれまでと変わらず多くの秩序を生みだしながら、社会におけるエントロピーの増大という代価を避けていくという行きかたでありましょう。

中略

 進歩のためには人びとは協力しなければなりませんが、協力を必要かつ豊かなものにしていた多様性は、協力が持続する過程で消失してゆきます。あらゆる進歩は、「協力ゲーム」から生じますが、各プレーヤーのもつ資源の均質化もまた、遅かれ早かれ生じてきます。多様性こそ初期条件であるとしたら、ゲームが長びくほど、勝つチャンスは減少していくわけです。
 人類学から見ると、現代の人類に課せられたジレンマとは、以上のようなものです。現代の人類は「世界文明」へと向かっているように見えますが、この「世界文明」という考え方そのものが、「文明」の理念に含まれ、また求められるもの、すなわち、可能なかぎり大きな多様性を示す諸文明の共存---と矛盾しないでしょうか。

中略

 ……すなわち、それぞれの個別文化と人類の諸文化全体が、ともに存続し、繁栄してゆくためには、外への開放と内へのひきこもりという二つのリズム、ときにはズレを生じ、ときには同調することの二つのリズムが必要だということです。


★ 
C.レヴィ=ストロース『レヴィ=ストロース講議 現代世界と人類学』(川田順造・渡辺公三訳 平凡社ライブラリー 2005年)より。「講演」自体は1986年に東京で行われた。

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Profile

石井 泉/いしい いずみ
東京出身。明治学院大学文学部フランス文学科卒。長きにわたり、出版社、編集プロダクションに在籍、主に科学・芸術関係の雑誌、書籍編集およびデザイン、公共施設の展示プランニング等を手がける。2006年に独立し、「エディション・ヌース」として事務所を開設。科学・芸術・哲学の領域を、横断的な視点で編集・表現していく感性と技を模索しつづけている。最近は依頼に応じてエッセイの執筆なども行う。