2005年2月 7日 22:27

○週末散歩:玉川上水を歩く2

三村さんちの旅日記:No.05三村 聡
― JR羽村駅~西武線玉川上水駅(05年2月某日) ―
玉川上水

 JR羽村駅を起点に、JR拝島駅経由で玉川上水沿いを西武線玉川上水駅まで歩いた。駅にして羽村、福生、牛浜、拝島、西武砂川、西武立川、西武玉川上水までの行程である。

 羽村駅で下車し、少しばかりある商店街を抜けて多摩川方面へ下る。途中、奇遇にも三鷹の「禅林寺」と同名の臨済宗建長寺派で、山門に「東谷山」としるされた寺があった。三鷹「禅林寺」が太宰治の菩提寺であるのに対し、羽村「禅林寺」は『大菩薩峠』の筆者、中里介山の菩提寺であることを初めて知った。境内には蝋梅が黄色い花をつけていた。

 この辺りから風景は田舎ののどかな景色へと変化する。昔からの百姓屋敷が軒を連ね、どの屋敷の庭にも梅ノ木があり、白い花がほころびはじめている。ほのかな香りを楽しむうちに、玉川上水の出発点、多摩川の水を取り入れる「羽村の堰」に出る。羽村市のホームページによると、『江戸幕府が開かれたことにより、人が増え、町が広がるにつれて、湧き水や溜池、周囲の小さな河川の水では足りなくなった。当時の技術では山の手の台地に井戸を掘ることは難しく、また海に近いところでは塩分が混じってしまうため、身近なところで良質の水を確保することが難しかった。そこで、水量の豊かな多摩川から水を引くことになり、武蔵野台地に堀を掘って人工の川をつくり、江戸まで水を流したわけである。地形をよく考え、谷などを横切ることなく江戸まで水を引いて来ることのできるルートが定められた。これが玉川上水であり、工事に尽力した玉川兄弟の像が、羽村堰公園に立てられている。

 取水地点の羽村から四谷大木戸(現在の新宿区四谷)までの約43キロメートルは堀で、さらに先の江戸城と江戸の町へは、石や木でつくった水道管(石樋・木樋)が地面に埋められて配水され、堀の工事はおよそ8ヶ月という短期間で完成したらしい。そのために、玉川上水沿いの村々はもとより、遠く檜原村からも人が集められたといわれている。また、伝承では、途中うまく水が流れずに堀を掘り替えたり、取水地点を変えるなどの苦労があったとも伝えられている。』

 先日のトラヴェローグの会で、国土交通省のM氏から道普請の大変さ、とりわけ、地域住民の皆さんとの話し合いの苦労話を聞かされたばかりである。M氏いわく「何百キロの道も、途中が1メートルつながらないだけで、道としての機能を果たさないんですよ!」。たしかに、途中で水路が1箇所途切れても、水は多摩川上流域から江戸城内へ届けられないわけである。当然といえば、当然の話しながら、先月に引き続き、この玉川上水という「建造物」を旅して(歩いて)みて、氏の真意を実感した。さらに、8ヶ月という工事期間は、新宿の木戸を抜ければ、あとは、武蔵野の台地が続いて、自然の障害物以外に人的な障害物などなかった時代であったにせよ、当時の幕府の権力の強さと治水・土木技術の高さを偲ばせる。

 このスタート地点である「羽村の堰」を眺め、さらに「玉川兄弟像」に挨拶して、玉川上水散歩を開始した。この取水口の下手すぐに浄化施設があり、多摩川の水を綺麗にしてから放水していることがわかって感激した。さらにしばらく歩くと見事な桜並木が続き「4月の花のシーズンにまた来たいね」と家内。そして、また驚くべき風景に出くわした。コンクリートの護岸を剥がして、緑の岸辺に作り変える工事が進められていたのだ。「見ててください」と言わんばかりに、「3年後」と書かれた岸辺の緑あふれる風景を描いた看板が掲げられていた。再び、M氏の笑顔が浮かんだ。いまでもこの玉川上水には鯉が無数に放流されているのだが、見かける生物は、この鯉と鴨くらいである。生態系の頂点に立つ生物しか生息していない風景は、どこか不自然である。ともあれ、川沿いの遊歩道をどんどん下流へと歩いた。両岸の風景は、先月のコースよりさらに武蔵野の面影を色濃く残している。コナラ、ケヤキ、ニレなど、どの木も大きさが小金井から三鷹周辺までとは圧倒的に違い立派である。勿論、水の勢いも水量の違いからか比較にならない程多いように感じた。

杉玉
▲ 田村酒造の杉玉

 30分程歩くと、立派な黒塀と昔ながらのレンガ煙突が視界に入ってきた。田村酒造「嘉泉」の堂々たる蔵屋敷である。ともかく敷地が広い。正門に回り、中に入れていただいた。改めてその素朴ななかに威厳を放つ清潔感あふれる古い建造物と、手入れの行き届いた日本庭園の美しさに心をうたれた。酒蔵の定番である「杉玉」の前で記念撮影。また、脇の門は、玉川上水とつながっており、昔はここから酒を船で運び出したに違いないと想像した。「戦前までは、福生の駅からここまで全て田村酒造の敷地であった」と聞いた記憶がよみがえった。そのときは「いくらなんでも」と思ったが、まんざらあり得ない話しではないなと素直に感じた。

玉川上水

 田村酒造を後に、さらに歩みを進め、五日市線、青梅線、八高線の踏切を次々渡り(正確には、玉川上水を線路が越えている)拝島駅まで到着した。一休みして、すぐに出発。さらに横田基地への引込み線、西武線の踏み切りを渡り、どんどん歩みを進めた。いっときに五つの線路を歩いて横断するのは生まれて始めての体験である。不思議なゾーンである。そうこうするうちに、川沿いに最近出来たらしい「立ち寄り湯」を発見した。これはラッキー、今回の経路にお風呂は入ってなかったので、さっそく家内と玄関口へ回ることに。「湯楽(ゆら)の里」という看板があり、かなり大きな施設である。入湯料750円を払い、さっそく中へ。露天、サウナを含む色々な種類の湯船があり、まずは満足。ただ、温泉ではなく、最近流行りの“スーパー銭湯”に分類されることが判明。湯上りのビールを頂きたい衝動に駆られるも、二人辛抱。まだ、予定のルートだと二駅ある。美酒は最後のお楽しみにして、また、玉川上水沿いを散策開始。そして、ようやく玉川上水駅に到着。さすがに疲れて足が棒状態である。そこからバスでJR立川駅へ戻り、駅ビルの上にある、新宿「隋園別館」の支店で絶品「水餃子」をお願いして生ビールで乾杯? 至高の一杯に家内もご満悦。家にたどり着くとさすがに疲れて、かろうじて娘たちに夕飯の支度をして、まもなく就寝。

 次回の玉川上水歩きは、西武線玉川上水駅を起点に、残されたJR武蔵小金井駅までの区間を訪ねることで、源流を羽村市に持ち、昭島市、立川市、国分寺市、小平市、小金井市、武蔵野市、三鷹市と流れる都下の全区間を踏破する予定。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 週末散歩:玉川上水を歩く2

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.cafe-nous.com/cgi-bin/mt/mt-tb.cgi/159

コメントする*印は入力必須項目です。